1710-『ウエアハウス〜Small Room〜』/Introduction

ウエアハウス』は、鈴木勝秀が25年以上の年月をかけて、エドワード・オールビー『動物園物語』を書き直して、様々な演劇や音楽の実験をしてきたシリーズである。

取り壊しが決まった教会の地下にある"憩いの部屋"で、地域サークル、「暗唱の会」のメンバーが活動を行っている。活動の内容は、各自がそれぞれ好きな詩や小説、戯曲などを暗記してきて、メンバーの前で暗唱するというものである。近くの出版会社で働く男もそのメンバーの一人である。だが、男はこれまで一度も暗唱を披露したことがない。アメリカを代表するビート派詩人、アレン・ギンズバーグの長編詩『吠える』をただひたすら練習しているだけである。一人になると、ぶつぶつと『吠える』をつぶやく。そこへ、若い男が現れる。いきなり英語で話しかけてきた若い男に興味を引かれ、ふたりは話し始める。質問ばかりする若い男に戸惑いながらも、いつしか若い男ののペースに巻き込まれていく──

ウエアハウス』の中の次のセリフは、僕自身のことである。

「年季入ってますねえ(この本)」

「同じ本を何度も読むのが好きなんです。中でもそれが一番好きだな」

「すごい書き込みだなあ」

「自分用に書き直したりしたんです。自分のものにしたかったから」

演劇公演も含む、ライブパフォーマンス『ウエアハウス』のサブタイトルを並べると、「ウエアハウス」「地下」「REST」「Noise」「Error」「period」。
そのほかに、CDやインスタレーション、5分くらいの映像作品、ワークショップの発表会、勉強会……『動物園物語』それ自体も、一度だけPARCO劇場で上演した。
そして、2011年の演劇集団円の主催で上演した「circle」(橋爪功主演)がある。
その後、渋谷のライブハウス、サラヴァ東京で、実験的リーディング公演を2回やっている。
サラヴァ東京版は、登場人物が八人だった「circle」を、二人用に書き直したものである。
今後も、このテキストを書き直し続け、様々な演者(俳優だけとは限らない)に上演してもらうことによって、テキストとしての強度を上げて行きたいと考えている。
今回は、3人バージョンを作成する。