ウエアハウス/booklet、るぽえ/booklet

 
1993年に『ウエアハウス』というシリーズを始めて、もう27年目になる。
このシリーズは、エドワード・オールビーの『動物園物語』をひたすら書き直して、まったく違うテキストを作り上げようという試みである。
ウエアハウス』というタイトルをつける以前から、『動物園物語』のセリフのカットアップは行っていたので、人生の半分以上、このオールビーの戯曲と格闘してきたわけである。
こういうのをライフワークとか言うのかもしれないが、単に飽きっぽくない性格なんだと思う。
やはり30年前に『LYNX』という芝居で現れた、「オガワ」という男についても、いまでもまだ考え続けている。
基本的に好きなものはほとんど変わらない。
同じことをずっとしてられるし、あまりブレない体質なんだと思う。
それと作るのは芝居であって、一人っきりで格闘しているわけではないから、詩人や画家など個人作業の方々に比べれば、はるかに開かれてもいるし。
だから、僕はプロデューサーに出会うたびに、『ウエアハウス』の最新版テキストを渡して、上演の機会を探っている。
撒き餌作戦である。
今回、「る・ひまわり」が食いついた。
 
「スズカツさん、『ウエアハウス』弊社でやらせてください」
「ありがとうございます」
「前回は登場人物が3人だったようですが、基本に戻って2人バージョンでもよろしいですか?」
「もちろん」
「では、少しご相談もあるので、お打ち合わせのお時間をいただけますか?」
「ご相談?」
「はい」
 
何はともあれ、僕のライフワーク的『ウエアハウス』は、こうしてまた一歩足を踏み出すことができた。
 
鈴木勝秀(suzukatz.)
 
 
『る・ぽえ』
 
というわけで、向こう見ずな「る・ひまわり制作陣」のおかげで、僕のライフワーク的長期シリーズ『ウエアハウス』は継続され、ここに上演の機会を得た。だが、ハードルを上げるのが大好きな「サディスティック・る・ひまわり」が、ただすんなりと『ウエアハウス』をやらせてくれるはずはなかった。
 
「ちなみに今回は、『ウエアハウス』ともう1本同時に作ってみませんか?3本立てシリーズの新作を、『ウエアハウス』と同時上演!」
「え?」
「弊社とスズカツさんのコラボ・シリーズも、『リヴァ・る』、『ド・るーク』と来たわけですから、やはり3本立てもやりたいなあ」
「それって、もう1本3本立ての新作書いて、『ウエアハウス』と同時に稽古して、同じ劇場で同じ舞台美術で上演するってことですよね」
「はい……あ、やっぱり無理ですかね、スズカツさんでも」
「いや、できます、できます、もちろんできます。でも、かなり実験的だなあ」
「実験公演お好きでしたよね」
「ええまあ」
「じゃ、やりましょう!実験、実験、実験〜!」
「は、ははは」
「あ、今回のお題は、スズカツさんのお好きに選んでください」
「じゃあ、詩人にします。タイトルは……『る・ぽえ』!」
「な〜んだ、もう考えてたんですね。ありがとうございます!」
 
というわけで、またしても僕は、「サディスティック・る・ひまわり」にチャレンジャー・スイッチを入れられてしまったのであった。そしてこれまで同様、刺激的で幸福な日々を送れたのだった。まずいな、このM的快感が完全にくせになりつつある。
 
「次回はですね……」
 
鈴木勝秀(suzukatz.)