「想像力駆使型芝居」/『レインマン』(2006/2007年)

「想像力駆使型芝居」 『レインマン』は、ロードムービーである。作品内で経過する時間は、大河ドラマと違ってさほど長くはないが、とにかくシーンがあちこちと移動する。そのたびに、衣裳は変わる、セットは変わる、主役のチャーリーとレイモンドに絡む登場…

「胎内=再生の場」(2005年)

「胎内=再生の場」 なぜこの戯曲は、『防空壕』というタイトルではなく、『胎内』と名付けられたのだろう。もちろん、『防空壕』より『胎内』の方が、芸術的にもアピール度においても、はるかにインパクトがあるのは間違いない。イメージも広がるし、単に太…

『ドレッサー』(2005年) 「Nowhere Man」 〜Isn't he a bit like you and me ? ヤツはちょっとあなたやぼくに似てないか?〜

『ドレッサー』(2005年)「Nowhere Man」〜Isn't he a bit like you and me ? ヤツはちょっとあなたやぼくに似てないか?〜 "ドレッサー(dresser)"という仕事は、日本語に直すと"衣裳方"ということになるのだろう。だが、このロナウド・ハーウッドの戯曲の…

『ヤバくなったら逃げろ!』

『ヤバくなったら逃げろ!』 自転車のロードレースでは、積極的にレースを引っ張ることを「逃げる=Breakaway」という。 さらに一緒にレースを活性化させるために、先行した選手同士で協力することを「逃げに乗る」という。 そして、一番長く遠くまで「逃げた…

Boys always work it out

Boys always work it out アナザーカントリー。 少年はいつでも、ここではないどこかに憧れる。 同性愛、共産主義──大人たちが忌み嫌うものに惹かれる。 そして拒絶される。 だから苦悩し、反抗し、葛藤する。 だが、住めば都なんて老人の戯言だ。 現状に満…

「A Cat Has Nine Lives」

「A Cat Has Nine Lives」 今回の『BOSS CAT』は、キャスト&スタッフを入れ替えての再演である。 初演は、2018年7月で、主演は京本大我。 東京公演は、よみうり大手町ホールでわずか3日間、大阪公演もシアター・ドラマシティで4日間であった。 もっと長くや…

「正攻法」/『夏の夜の夢』演劇集団 円

「正攻法」 僕は演劇の一回性にこだわりがあって、創作カンパニーは公演が終わったら、その都度解散するのが望ましいと思っている。 個人的に、創作の継続はあくまで個人の問題なのである。 それに集団の維持はどうにも荷が重すぎる。 そんな僕ではあるのだ…

「なぜかここで自己紹介」/『ピース』

私=スズカツの中には、演出家と作家と観客の3人が住んでいる。 演出家のスズカツは、かなりストライクゾーンが広く、ストレートプレイにミュージカル、コンサートにダンス、ウエルメイドに映画・小説・マンガ原作と、これまで舞台物でやらなかったジャンル…

ご挨拶/二十面相

ご挨拶 僕には、ある作家を一時期に集中して読む傾向がある。 数年前の江戸川乱歩は、そのひとりだ。 発表順に読んだので、『二銭銅貨』『D坂の殺人事件』『心理試験』などの本格派推理小説から始まって、『赤い部屋』『人間椅子』『鏡地獄』などの奇抜な犯…

『Kappa』演出/鈴木勝秀(suzukatz.)

『Kappa』演出/鈴木勝秀(suzukatz.) 3月の初旬、『Kappa』のヴィジュアル撮影があったので、都内某所のスタジオへ見に行った。 ヴィジュアル撮影は、基本的に遠巻きに見ているだけなので、僕が演出家であることに気づかない関係者もいたりする。 今回も…

『Kappa』上演台本/鈴木勝秀(suzukatz.)

『Kappa』上演台本/鈴木勝秀(suzukatz.) 中学生の頃、神田の古本市へ行って、「芥川龍之介作品集」全4巻を買った。 まだ三島由紀夫にハマる以前のことだ。 そして、とにかく端から読んでいった。 だから、芥川の主要作品は、だいたい読んでいる。 だが、…

「Mogut=Yellow Submarine?」

「Mogut=Yellow Submarine?」 まだコロナ禍になる前、原作を読んで僕が一番最初に考えたのは、「Black Lives Matter」についてだった。そして、キング牧師とマルコムX。 鈴木舞さんの原作『ハリネズミホテルにようこそ』は、子供向けのハートウォーミング…

「ロック・リーディング」 僕はリーディング公演では、いつも音楽を作ろうと思っている。 いや、芝居を作るときもそうかもしれない。 ずっと演劇は聴覚のメディアだと思ってきたし、僕にとって「音」は、演劇を作るうえでとても重要なのである。 ただし、こ…

「箱庭」を作る 30代後半に芝居を3年間休んでいる間、僕は心理学の本をかなり読んだ。 何のために読んだかというと、自分によりフィットした演出方法のヒントを見つけるためだった。 そこで、河合隼雄さんの「箱庭療法」に出会った。 それは驚くべき療法で…

ウエアハウス/booklet、るぽえ/booklet

『ウエアハウス』 1993年に『ウエアハウス』というシリーズを始めて、もう27年目になる。 このシリーズは、エドワード・オールビーの『動物園物語』をひたすら書き直して、まったく違うテキストを作り上げようという試みである。 『ウエアハウス』というタイ…

『THE BLANK!』〜近松門左衛門空白の十年〜/ booklet

「作り話」 僕は戯曲を常にテキストとして扱ってきたので、作家個人に対する興味がどちらかというと薄いほうである。向き合うのは純粋に作品だけ。 ところが、今回の『THE BLANK!』のベーシック・テキスト『口伝 近松門左衛門の真実』を、3年前にプロデュ…

ダルメシアンズ@グレープフルーツムーン(三軒茶屋) (190731)

ダルメシアンズ@グレープフルーツムーン(三軒茶屋) (190731) 大嶋吾郎(G、Vo)と久保田陽子(Vo)の22年も続くヴォーカル・ユニット。 バックは常に超一流。 今回は以下の手練れ。 笹路正徳(Key) 伊丹雅博(G) 沖山優司(B) Grace(Ds,Per) 村上ポン…

1903-ドルーク/booklet-190215

「シリーズ化へ向けて」 2016年に、る・ひまわりから『僕のリヴァ・る』のオファーを受けたとき、僕は試されているのかと思った。 「テーマは兄弟です。お題は、「乳幼児と新生児」「ゴッホとテオ」「盲目のジェロニモとその兄」の3つ。これを2時間以内の…

1904-hymns/booklet

『直感 Intuition』 誰かが発したメッセージを理解するためには、3つの段階がある。 (1)フレーム・メッセージを理解する。 (2)外部メッセージを理解する。 (3)内部メッセージを理解する。 これを演劇作品に置き換えると、次のようになる。 (1)「…

『R&J』lyrics

『R&J』lyrics M1-a:No Future/ピノキオ Don't be told what you wantDon't be told what you needDon't be told how you liveDon't be told how you love 未来なんかない聞きたくもないThere's no future, boy未来なんかない知りたくもないThere's no fut…

『鈴木勝秀(suzukatz.)-190110/ホロン』

僕がサラヴァ東京=ラボ(実験室)で2ヶ月おきにリーディングをやっていたのは、2012年9月〜14年1月のことだった。実に多くの実りがあった。だが僕のメイン・ラボだった青山円形劇場同様、サラヴァ東京もなくなる。感傷的な気持ちはまったくないが、最後に…

1809-6週間/booklet

偉大なるチャレンジャーたちすでに大いなる成功を遂げた作品を新たに作り直すというのは、実にやりがいがあると同時に、もちろん難しいことである。 しかし日本における翻訳劇のほとんどは、すでにその作品の本国で、さらには諸外国で、それ相応の評価がある…

『BOSS CAT』イントロダクション

中世なのか、現代なのか、近未来なのか、一人の粉挽きが死んで、その残した財産を、三人の子供たちで分けることに。財産は、粉挽き会社と貯金や株の動産、それと一匹のネコ。会社は長男、動産はヤリ手の三男が相続し、ぽんやり次男はネコしかもらえず。とこ…

『BOSS CAT』ご挨拶

「バカ芝居」この芝居は、その……「バカ芝居」です。出てくるのはバカばかり。ネコは当然、王さまだろうが、姫だろうが、全部バカです。ですがここ数年、僕は自分もバカのひとりであることにようやく自覚がでてきました。以前は控えめに言っても、自分はわり…

1804-GJ/booklet-180401

『GJ』はオフィシャルでは「ジー・ジェイ」と読むことで統一されておりますが、個人的には「ギジ」と読んでいただけるとうれしいです。だったら『GIJI』と表記しろ、というご意見もあるかと思いますが、脚本を書いた本人としましては、あえて「I」を抜くこと…

1801-GANTZ/booklet

稽古しながら考えたこと原子の寿命はほぼ永遠らしい。そして人間は死ぬと、いったんその個体を形成していた原子に分解され、宇宙空間に放り出されるそうだ。だが原子は消滅することなく、再び他の原子と結びついて、何かを形成する。その何かが、再び人間で…

1804-GJ/booklet

『GJ』はオフィシャルでは「ジー・ジェイ」と読むことで統一されておりますが、個人的には「ギジ」と読んでいただけるとうれしいです。だったら『GIJI』と表記しろ、というご意見もあるかと思いますが、脚本を書いた本人としましては、あえて「I」を抜くこと…

1710-『ウエアハウス〜Small Room〜』/Introduction

『ウエアハウス』は、鈴木勝秀が25年以上の年月をかけて、エドワード・オールビー『動物園物語』を書き直して、様々な演劇や音楽の実験をしてきたシリーズである。 取り壊しが決まった教会の地下にある"憩いの部屋"で、地域サークル、「暗唱の会」のメンバー…

1708-グローリアス/booklet

「ブラボー!」クラシックやオペラの上演における「ブラボー!」や歌舞伎の大向うなど、観客からの掛け声が劇場の雰囲気を盛り上げることに一役買うことはたびたびある。 僕がやってきた小劇場系ではほとんどそのような習慣はないが、過去に一度だけ、見事な…

『ぱんきす!』に向けて書いたコメント集

1502-ぱんきす/booklet 教えられるのを待って、自分からは何もしないようなヤツはいらない。(註1:今回の稽古場には、振付の先生も、歌唱指導の先生も、とにかく「先生」と呼ばれるかたは一人もいません) 物知り顔で教えるようなヤツは去れ。(註2:もち…