2024-01-01から1年間の記事一覧

「想像力駆使型芝居」/『レインマン』(2006/2007年)

「想像力駆使型芝居」 『レインマン』は、ロードムービーである。作品内で経過する時間は、大河ドラマと違ってさほど長くはないが、とにかくシーンがあちこちと移動する。そのたびに、衣裳は変わる、セットは変わる、主役のチャーリーとレイモンドに絡む登場…

「胎内=再生の場」(2005年)

「胎内=再生の場」 なぜこの戯曲は、『防空壕』というタイトルではなく、『胎内』と名付けられたのだろう。もちろん、『防空壕』より『胎内』の方が、芸術的にもアピール度においても、はるかにインパクトがあるのは間違いない。イメージも広がるし、単に太…

『ドレッサー』(2005年) 「Nowhere Man」 〜Isn't he a bit like you and me ? ヤツはちょっとあなたやぼくに似てないか?〜

『ドレッサー』(2005年)「Nowhere Man」〜Isn't he a bit like you and me ? ヤツはちょっとあなたやぼくに似てないか?〜 "ドレッサー(dresser)"という仕事は、日本語に直すと"衣裳方"ということになるのだろう。だが、このロナウド・ハーウッドの戯曲の…

『ヤバくなったら逃げろ!』

『ヤバくなったら逃げろ!』 自転車のロードレースでは、積極的にレースを引っ張ることを「逃げる=Breakaway」という。 さらに一緒にレースを活性化させるために、先行した選手同士で協力することを「逃げに乗る」という。 そして、一番長く遠くまで「逃げた…

Boys always work it out

Boys always work it out アナザーカントリー。 少年はいつでも、ここではないどこかに憧れる。 同性愛、共産主義──大人たちが忌み嫌うものに惹かれる。 そして拒絶される。 だから苦悩し、反抗し、葛藤する。 だが、住めば都なんて老人の戯言だ。 現状に満…

「A Cat Has Nine Lives」

「A Cat Has Nine Lives」 今回の『BOSS CAT』は、キャスト&スタッフを入れ替えての再演である。 初演は、2018年7月で、主演は京本大我。 東京公演は、よみうり大手町ホールでわずか3日間、大阪公演もシアター・ドラマシティで4日間であった。 もっと長くや…

「正攻法」/『夏の夜の夢』演劇集団 円

「正攻法」 僕は演劇の一回性にこだわりがあって、創作カンパニーは公演が終わったら、その都度解散するのが望ましいと思っている。 個人的に、創作の継続はあくまで個人の問題なのである。 それに集団の維持はどうにも荷が重すぎる。 そんな僕ではあるのだ…

「なぜかここで自己紹介」/『ピース』

私=スズカツの中には、演出家と作家と観客の3人が住んでいる。 演出家のスズカツは、かなりストライクゾーンが広く、ストレートプレイにミュージカル、コンサートにダンス、ウエルメイドに映画・小説・マンガ原作と、これまで舞台物でやらなかったジャンル…

ご挨拶/二十面相

ご挨拶 僕には、ある作家を一時期に集中して読む傾向がある。 数年前の江戸川乱歩は、そのひとりだ。 発表順に読んだので、『二銭銅貨』『D坂の殺人事件』『心理試験』などの本格派推理小説から始まって、『赤い部屋』『人間椅子』『鏡地獄』などの奇抜な犯…

『Kappa』演出/鈴木勝秀(suzukatz.)

『Kappa』演出/鈴木勝秀(suzukatz.) 3月の初旬、『Kappa』のヴィジュアル撮影があったので、都内某所のスタジオへ見に行った。 ヴィジュアル撮影は、基本的に遠巻きに見ているだけなので、僕が演出家であることに気づかない関係者もいたりする。 今回も…

『Kappa』上演台本/鈴木勝秀(suzukatz.)

『Kappa』上演台本/鈴木勝秀(suzukatz.) 中学生の頃、神田の古本市へ行って、「芥川龍之介作品集」全4巻を買った。 まだ三島由紀夫にハマる以前のことだ。 そして、とにかく端から読んでいった。 だから、芥川の主要作品は、だいたい読んでいる。 だが、…

「Mogut=Yellow Submarine?」

「Mogut=Yellow Submarine?」 まだコロナ禍になる前、原作を読んで僕が一番最初に考えたのは、「Black Lives Matter」についてだった。そして、キング牧師とマルコムX。 鈴木舞さんの原作『ハリネズミホテルにようこそ』は、子供向けのハートウォーミング…