右手親指2

翌日、再び東京女子医大を訪ねた。
もちろん、指は動かない。
「手術しましょう」
血液検査をされ、日時が決められた。
手術当日、手術着に着替えさせられ、脇の下から麻酔を打たれ、テレビや映画でしか見たことなかった、手術室へ入った。
担当医が、僕の指先を触って訊く。
「感じますか?」
「はい」
「じゃ、もう少し待ちましょう」
再び担当医が、僕の指先を触って訊く。
「感じますか?」
「はい」
「そんなはずないけどなあ。もう十分時間経ってるし」
「でも、感じるんです」
「それ、多分、振動が伝わって、感じてるような気がしているだけだから。やっちゃいましょう」
「え?」
そして、手術しているところは見えないように、顔に覆いをされて、手術は始められた。
「イタッ!」
「え?」
「ちょっとイタイんですが……」
「大丈夫、すぐ感じなくなります」
「……」
当時僕は、かなりアルコールを摂取していた。
ケガしてから手術までの間も飲んでいた。
多分、そのせいで麻酔の効きが遅かったのではないかと思っている。
手術は傷害行為だから、医師免許がなければ手術を行うことは許されない。
それを実感した。