第三舞台と大/早稲田攻社2

大高さんの下宿で、鴻上さんから新しいアンサンブルの構想を聞かされた。
すでに、『朝日のような夕日をつれて』ではなかったが、オリジナル脚本があった。
「大高の次に声をかけたんだ」
大変光栄だった。
だが、その少し前に僕は、新人公演演出のAと新しいアンサンブルを作る話をしたところだった。
鴻上さん、大高さん、A。
3人のうちで一番仲良くしていたのは大高さんだったので、大高さんからも熱心に誘われ、気持ちは大きく揺らいだ。
だが、僕はAと別のアンサンブルを作ることを選んだ。
鴻上さんはすでにオリジナルを用意していたのに対して、Aは漠然としたプランしかないし、準備もなかった。
新人公演もすごく面白い芝居とはいいがたかった。
それでも、鴻上さんではなくAを選んだのは、すでにオリジナルがあっただけに、鴻上さんとは方向性が違う、と感じてたからだ。
僕のやりたいことを実現するにあたって、鴻上さんとAを比べた場合、それは明らかにストーリーを解体した構成演劇を目指すAだったのだ。
それと、鴻上さんと組んだら、多分、鴻上さんの力に抑えこまれてしまうような気がしたのが大きかったのだと思う。
すでに、心の奥底で、僕は"自分の"がほしかったのだ。
というわけで、朝まで説得されたのだが、気持ちは変わらなかった。
だが、鴻上さんも大高さんも、とてもフェアで、その後もまったく変わらずに接してくれた。
それどころか、二人ともLRB企画を応援してくれたし、第三舞台が超人気劇団になってからは、ラジオやテレビの仕事をいくつも振ってくれて、経済的にも僕を助けてくれた。
芝居ではまったく収入がなかった僕は、それで芝居をつづけることができたのである。