ゴドーを待ちながら2/早稲田大学大隈講堂裏

早稲田大隈講堂裏には、サークル部室(長屋)が並ぶスペースがあった。
そこは劇研広場とも呼ばれ、基本的に劇研が公演を行う特設テント(100〜200人の観客を収容できた)が建っていたが、公演と公演の間に、何もないアスファルト広場に戻ることもあった。
サークル部室は、木造トタン屋根のボロボロで、各サークルに割り当てられた部屋はどこも狭く、劣悪な住環境だった。
しかも、汗まみれのTシャツにジャージやタオル、履き潰されたボロボロのスニーカーが、そこかしこに散らばっているのだ。
さらに、そこでタバコは吸うは、安酒を飲むのだ。
だが、人間の環境順応力は凄まじく、最初は入るのさえおぞましかったその部室で、1ヶ月もすると、たとえ女子であってもホカ弁を食えるようになるのであった。
そのうえ、大学構内とは違って、24時間出入り可能だったので、宿泊するヤツらもいた。
他の部室もさして変わらない感じだった。
ZAZOUS THEATER旗揚げ以来、ずっと照明プランナーである倉本泰史、その中のサークルのひとつ舞台美術研究会(舞台美=ブタビ)だった。
舞台美は劇研よりはキレイに使っていたが、ほとんど照明機材の倉庫にしていた感じだ。
そして部室のほかに、その広場の正面奥に、ブロックを積んで作られた劇研のアトリエがあった。
その入口は重たい鉄製の観音扉だった。
入学式の直後に入会しようと思ってこの広場に足を踏み入れたとき、なんだかすごくヤバイところに来てしまった、という記憶がある。
ゴドーを待ちながら』の演出プランを考えたとき、一番最初に浮かんだのは、まさにこの劇研広場での野外公演だった。