女中たち1

LRB企画の第一弾(最初から何回も公演するつもりだった)に『女中たち』を選んだのは、登場人物が3人であることが一番の理由である。
しかし、3つの役はすべて女役である。
それを男だけでやるというのは、いささか実験的過ぎるかもしれないが、僕たちには「面白そうだ」が何より優先した。
古典も新劇も学ばず、芝居の作り方すら試行錯誤の連続で、判断基準となるのは「面白そうだ」だけで十分だった。
一方で確信もあった。

3人が新人だったとき(1980年)、演劇企画「会」の『女中たち』が早稲田銅羅魔館で上演された。
早稲田銅羅魔館は、大学の南門を出たところにある喫茶店の2階にあり、のちに僕がブランチを演じたのはここである。
で、「会」の中心メンバー千賀ゆう子さんと繋がりのある劇研の先輩・吉井さんの命令で、僕たち3人はボランティア肉体労働者として、劇場仕込みに送り込まれたのだった。
そして、労働のご褒美に招待券をもらって、芝居を見せていただいた。
渡辺守章さんの演出だったが、なんと女中二人を男性キャストが演じていたのである。
「あ、こういうの"あり"なんだ」とそのとき刷り込まれた。
だいたい劇研は学生サークルだから、子供から老人まで、せいぜい4〜5歳の年齢幅の役者が演じているのである。
人間ではない役もざらにあった。
男が女役だろうが、その逆だろうが、違和感を感じたことすらなかった。
面白ければなんでもOKだったのである。