お気に召すまま-1

お気に召すまま-1
作:堀江寛/演出:浅井孝一
1980年9月13〜15日。
新人試演会。
Oさんのあとを受けて新人公演の演出を引き受けたのは、2年生の浅井孝一だった。
浅井は九月会のメンバーで、春の公演で九月会が解散をしたことによって、体が空いていた。
元々、大学は夏休みの時期ではあったが、すでに浅井は大学の授業に何の価値も見出すことがなく、早期中退をのぞんでいた。
しかし、学籍を失うと学割を使うことができなくなる、という親が聞いたら即勘当、というような理由だけで第一文学部に籍を置いていた。
将来的には、鈴木忠志氏タイプの演出家を目指していたのだと思う。
浅井に誘われて、僕も早稲田小劇場の芝居を何本か見に行ったり、鈴木忠志の演劇論集『内角の和』や『劇的なるものをめぐって』、『騙りの地平』を読んだりした。
浅井は根っからのスタッフで、しかも有能だったので、2年生のこの段階でかなりの信用があった。
新人公演は3年生以上の人間が見る、というのが劇研の慣例だったので、特別抜擢という感は強かった。