右手親指4

3ヶ月経って、ギブスが外された。
問題は、爪の上についているボタンと親指の付け根から生えている金属線だ。
たしか繋がっている……
もう一度手術して外すのか?
医者は、はさみを取り出して、ボタンをちょんと切った。
え?
「ちょっと痛いからね」
医者は力任せに金属線を引き抜いた。
「あぐぅ!」
それからグリグリと親指をマッサージ(拷問に近い)された。
「動かしてみて」
動いた。
「これからリハビリに通ってもらうけど、普段から自分で動かすようにしてくださいね」
それ以来、東京女子医大には近づいていない。
病院は嫌いなのだ。
つまり、リハビリには通わなかった。
しばらく右手ではライターすらつけられなかった。
現在でも右親指は曲がったままだし、指先にはちゃんとした感覚がない。
長時間手書きを続けるのは、筆記用具が腱に当たってかなりの苦痛である。
書くための道具が、ワープロ、コンピュータへと移行して本当にありがたく思っている。
この間に、新人公演も終わり、いよいよ劇研内での進路を考えなければならない時期を迎えていた。