コンピュータデビューは、初代iMacである。
通信機能付きワープロを検討していたのに、初代iMac導入に踏み切ったのは、"見た目"である。
もうどのワープロより、コンピュータより美しかった。
僕の芝居をご覧になった方はわかると思うが、僕にとって"見た目"はとても重要なことである。
ウォーホルではないが、表面的なことが内実よりも意味深いと考えている。
いや、内実には意味などないとさえ考えているかもしれない。
とにかく、初代iMacは僕の心を捉えた。
だが、すぐに買いに行ったりはしない。
衝動的に何かをするタイプではないのだ。
怒りにまかせて誰かを殴ったりするように見えるときも、実は朝からずっと「今日は誰かを殴ろう」と思っているタイプなのだ。
基本的に確信犯。
今だから書けることだが、初めて早大劇研で新人公演(新人に池田成志がいた)を演出したとき、ゲネを途中で止めた。
こんなことは普通許されることではないが、ゲネを途中で止めるのは最初から計画していた。
「おい、なんだ、この芝居?ナメてんのか!新人公演は別に金とってやってるわけじゃねえんだから、今から公演中止にしてもいいんだぞ!」
計画的脅しである。
尋常ではない緊張感が劇研アトリエに張りつめる。
そこで、僕と同期で一緒に新人の世話をしていた岩谷(故人)と吉田(朝)が新人を励まし、もう一度最初から芝居をやって、合格点を出す。
新人はテンションが上り、達成感を感じる。
酷い。
こんなやり方は誰も真似してはいけない。
そんな僕なので、初代iMac購入までも情報収集とかなりの自問自答をくり返した。