「錬金術とは想像力のことであると思っている」

錬金術とは想像力のことであると思っている」

古代人から現代人に至るまで、"錬金術"という言葉には人間を魅了する力があるようだ。
それも科学者のみならず、哲学者、心理学者、宗教家、王侯貴族から一般庶民まで、"錬金術"は誰の心をも虜にする。
その結果として、"錬金術"は科学の進歩に寄与し、哲学・文学・心理学、そして芸術全般にも多大な影響を及ぼした。
残念なのは、"錬金術"の最終目的である、卑金属を貴金属に変えることと不老不死、この二つを人類は未だ手にしていないことである。
理論的には、核融合によって金を作り出すことが可能であることは知られているわけだが、今のところそれを現実にするための技術はないらしい。
とは言うものの、現実に"錬金術"が完成してしまったら、それはそれで人生の面白味はかなり減じてしまうかもしれない。
「金」と「命」──この二つを並べて語るのは、とても不遜な気もするが──は、なんといっても人生そのものであるからだ。
そして、それは今も昔もちっとも変わらない。
ベン・ジョンソンの『錬金術師』が、今日でも輝きを放ち続けているのもそのためだ。

「これがどのように傑作かと申せば、男だろうが女だろうが、出てくる者はバカばかり。感動もなければ、驚くようなストーリー展開もなし。さらに言えば、深いテーマも教訓もなければ、心に響くようなセリフも一切なし。ただひたすらバカ者たちによる"茶番劇"が続くのでございます」

芝居冒頭のこのセリフは原作にはない。
今回、僕が上演台本を作るにあたって書き足したものだ。
このセリフは、この戯曲に対する僕の率直な感想である。
そして僕は、「男だろうが女だろうが、出てくる者はバカばかり。ただひたすらバカ者たちによる"茶番劇"が続く」ことに、実はとても感動を覚えたのだ。

「歌って踊って芝居して......どっこい今日も生きている。
それが幾千年と変わらぬ我らが姿。
実にしぶといもんさね」

人間は本来強い。
この戯曲はもちろん、橋爪さんをはじめ、出演者のみなさんに触れていると、本当にそう思わされるのだ。

僕たちは、ちょっと人生を難しく生きてしまっているのではないだろうか。

鈴木勝秀(suzukatz.)