昨年、川平慈英と『Believer』をやったとき、慈英からニック・ホーンビィ原作の『ぼくのプレミア・ライフ』という映画のDVDを渡された。
原題は『Fever Pitch』。
「スズカツさん、オレ、こういう内容の一人芝居をやりたいんですよね」
さっそく見た。
それは、ある熱烈なアーセナル・ファンが、いかにしてアーセナルとともに生きているか、というのを描いた作品だった。
サッカー選手でもない、サッカー関係者でもない、ただのファン。
まさに、僕たちのことなのである。
子供のころから、アーセナルを一途に応援し続け、出世よりも、恋愛よりも、アーセナルへの想いがプライオリティを持ってしまう男の話。
優秀な教師というインテリジェンス溢れる一面を持ちながら、ことアーセナルのことになると理性を失ったかのように、他のことは目に入らなくなる。
まさに、フランス・ワールドカップ予選のときの日本代表を応援、いや信じ続ける慈英と同じ。
「いきなり、一人芝居は難しいから、来年の『J's BOX』(川平慈英のソロライブ)で、リーディングみたいのから始めてみたいんですけど、スズカツさん、台本書いてくれません?」
僕の返事は即答。
「やらせて!」
はじめは映画をアレンジして上演台本を作ろうと考えていた。
ところが、今年の2月にロンドンへ行って、アーセナルの本拠地、エミレーツ・スタジアムでアーセナル vs バルセロナを生観戦したことで、僕の中で変化が起きた。
本物のアーセナル・ファンの熱気にやられたのだ。
日本には、まだまだサッカーは文化として定着していない。
あのファンのありようこそが、本物のサッカー文化だ。
そこで、ロンドン在住の日本人アーセナル・ファンというオリジナル・キャラクターを作って、その男の物語を書きたくなった。
で、その男を慈英に何度も演じさせて、成長させていきたくなった。
帰国して、その話を慈英にすると、慈英も大いにノッてくれた。
「じゃあ、リーディング、一人芝居、ストレートプレイ、で、最後はミュージカルまで作っちゃいましょうか!」
「おお、ロンドン公演とかして、アーセナル・ファンにも見てもらいたいな!」
「やりましょう、やりましょう!」
というわけで、いいオトナが子供のような心を取り戻し、新たなチャレンジを開始したのであった。
今回は、そのプロローグのようなものである。
「オオノ・ジェイムズ・スミス・ジュンイチ」という名の、日本人とイギリス人のハーフで、ロンドン在住のアーセナル・サポーターの冒険の旅はここから始まる。
『J's BOX』vol.4 smile
2011.9.3.sat〜4.sun.
ニッポン放送イマジン・スタジオ
企画・原案・演出・出演:川平慈英
リーディングテキスト:鈴木勝秀
音楽監督・ピアノ:岩崎廉
コーラス:織田佳奈子/栗山絵美
企画・製作:ケイファクトリー/シーエイティプロデュース
料金:6,000円(全席自由)
お問い合わせ:CATチケットBOX 03-5485-5999