ダルメシアンズ@グレープフルーツムーン(三軒茶屋) (190731)

ダルメシアンズ@グレープフルーツムーン三軒茶屋

(190731)

 


大嶋吾郎(G、Vo)と久保田陽子(Vo)の22年も続くヴォーカル・ユニット。

バックは常に超一流。

今回は以下の手練れ。

笹路正徳(Key)

伊丹雅博(G)

沖山優司(B)

Grace(Ds,Per)

村上ポンタ秀一(Ds)

 


客入れBGMはトッド・ラングレン

定時になるとサティのジムノペディが流れる。

しばらく経つとピアノのメロディにヴォイスが絡みつく。

そして痙攣を起こしたように、ピアノのフレーズがリピートする。

このライブのために作られたものらしい。

こういう音作品を聞かされると、演出家としては何かやりたくなってしまうのだが、それは余計なこと。

このオーバーチュアの間に、ポンタさんを先頭に、メンバーが位置に着く。

音が切れた瞬間に、『R&J』のオープニング曲の生演奏。

ツインドラムが凄まじい。

『R&J』では、ルー・リード風だったが、今日のヴァージョンはキング・クリムゾン風に感じた。

ライブで音を追求しているという印象。

まず演奏者全員が、今そこで鳴っている音をちゃんと聞いていることの重要性を再認識。

自分の演奏のためではなく、瞬間的に消えていく音を聞いて、それに反射的とも言えるスピードで反応している。

レコーディングされたものを、楽譜を頼りに再現するライブとは正反対。

曲のフォーマットはしっかりしているのに、演奏はかなり即興的。

それも個々人の蓄積された音楽知識、テクニックの中から、次々と最良なものが選び出され、実際に音となる。

ゆえに、全員、研究者のような顔つき。

こちらも、実験室で手練れの研究者(ミュージシャン)が、音楽をどのように作っていくのかを見学しているような感覚。

ヘビメタ・クイーン陽子姉も耳を凝らしている。

とにかく全編にわたってリズムが完璧。

ゆえにすべての曲がグルーブしている。

個人的に芝居に求めているものがここにある。

 


ライブの中盤、スズカツ芝居のサウンドトラックから5曲。

『Boss Cat』Where’s My Throne

GANTZ』Izumi

『R&J』The Fence/Love At First Sight

『6週間のダンスレッスン』God Only Knows

どれもオリジナルとは全然違うテイストになっていたけれど、なかでもIzumiは凄かった。

何だろう、超絶インタープレイって言うのだろうか。

「今」でしか聞けないもの。

演奏終了後、衝撃だけが記憶されている。

絶対に芝居のBGMにはできない。

だが、この衝撃を芝居の形にすることはできる。

演技として表現させることもできる。

そうやって、音楽と芝居が行ったり来たりするのがいい。

このスズカツ芝居音楽コーナーは、個人的に特別なものであったのは言うまでもない。

ほかには、以下のような曲があった。(個人的記憶)

ホール&オーツ「Kiss On My List」

レッド・ツェッペリン「What Is And What Should Never Be」

ジャパン「The Unconventional」

スティービー・ワンダー「I Wish」

さらに数曲演奏されたが、誰の何という曲かはわからず、確認もせず。

トーク(吾郎くんのこれが異様に和む)を交えて、休憩なしで1時間40分くらい。

個人的にはベストな長さ。

 


吾郎くんはダルメシアンズを「アマチュア・バンド」だと強調する。

それはこれで食ってないということ。

ゆえに聴衆に媚びることなく、好きなように演奏する。

「このくらいの地下でこっそりやるのがいいのかもね」と吾郎くんは言う。

本当に好きなものは隠される。

しかし、パフォーミング・アートが完全に隠されてしまうということは、実は起こり得ない。

どこからか漏れて、どこかへ伝わる。

じゃあ、どこかのスタジオで、誰にもオープンにせずにやればいいのではないか、というご意見もあるかもしれない。

だが、それは余計なお世話。

現に、観たい人、聴きたい人は、毎回いるのだ。