1903-ドルーク/booklet-190215

「シリーズ化へ向けて」

2016年に、る・ひまわりから『僕のリヴァ・る』のオファーを受けたとき、僕は試されているのかと思った。

「テーマは兄弟です。お題は、「乳幼児と新生児」「ゴッホとテオ」「盲目のジェロニモとその兄」の3つ。これを2時間以内のオムニバス芝居に仕立ててください。ちなみに、登場人物は4人です」

普通僕への仕事のオファーは、「劇場があるのですが、オリジナルをやりませんか?」か「この戯曲の演出をお願いしたいのですが、いかがでしょう?」のどちらかだ。
ところが『僕のリヴァ・る』は、戯曲はないし、上演台本を書かなくてはならないけど、縛りがめちゃめちゃキツイのだ。
しかもタイトルだけは、すでに『僕のリヴァ・る』という、ちょっと意味不明なものに決まっていた。

「リヴァルはスペイン語でライバルです。兄弟って最初のライバルですよね」

る・ひまわりは、芝居の宣伝をする会社だが、芝居の制作もやっているという認識はあった。
僕の芝居の宣伝業務も、何本も担当してくれていた。
ちゃんとした会社だ。だが、このオファーは尋常じゃない。
とはいうものの、尋常でないことにかけては、僕だってそう引けを取らないつもりだ。
無理難題を与えられたほうが、やる気が出るという特異体質だ。
だから話を聞いていて、僕の頭の中では「これって大変かも」というより、「これっていろんな実験ができるかも」という考えの方が強くなっていった。
「実験、実験、実験〜」
僕は何より実験が大好きなのだ。というわけで、僕はオファーを引き受け、結果的にとても充実した芝居ができた。

「またやらせてくれないかなあ」

そんな僕の願いは、ここにに叶った。

「タイトルは『僕のド・るーク』。テーマは友だちです。お題は、「樹齢何百年にもなる桜の木と少年」、「サリエリモーツァルト」、夏目漱石の『こころ』」の3つ。これを2時間以内のオムニバス芝居に仕立ててください。で、登場人物は5人です」
「はいはい」
「それから、Wキャストを2組入れます。同じ演技をさせるんじゃなくて、キャストが変わると芝居も変わることを見せてください」
「え?」

ハードルが上がってた……まあ、いいか、シリーズ化してくれれば。

鈴木勝秀(suzukatz.)